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桑田佳祐の新曲「君への手紙」。もう独創性なんていらない60歳の境地

 リスナーは忘れがちですが、60歳を過ぎてもポップソングを書き続けるのはどれだけしんどいのでしょう?

 キャリアの初めと同じみずみずしさを保つのは土台無理な話ですし、だからといって新しい試みで目先を変えれば解決するものでもない。となると、飽きや馴れとの付き合い方がカギとなるのかもしれません。

過去の桑田の曲が浮かぶけど、トーンは徹底して控えめ



 その点で桑田佳祐の新曲「君への手紙」(11月23日リリース)は、示唆に富む“還暦のポップス”でした。

 聴いた瞬間から「真夏の果実」だとか「いつか何処かで」といったDメジャーの名曲が浮かぶ“古風な”桑田バラードなのですが、しかし明らかな変化も見られるのです。


 たとえば、サウンド。歌い出しはアコースティックギター1本で、あとから他の楽器が重ねられていく、その数の少ないこと。現在のヒットチャートからしたら、禁欲的とも言えるほどに抑えているのですね。

 そのおかげで歌と演奏の余韻が引き立ち、血圧が落ち着いていくような安心感が生まれる。

 かつてエルトン・ジョンの「Come Down In Time」をカバーしたスティングが「ストリングスだの何だのと必要な曲には中身がないんだ」と話していたのを思い出します。

君への手紙

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 この控えめなトーンがサビにも共通しているのが面白いところ。たとえば「TSUNAMI」などでダイナミックに盛り上げていた長尺のメロディは省略され、音の上下動も少なく淡々とした語り口になっている。

 これが功を奏し、甘さに流されず楽曲を引き締めているのだと思います。トッド・ラングレンの「It Wouldn’t Have Made Any Difference」の歌い出しを思わせる涼やかさなのです。

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新しさやオリジナリティを超えた、還暦のしぶとさ

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君への手紙 (通常盤)

あの「ヨシ子さん」に続く楽曲は、切ないアコースティック・ロッカ・バラード!内村光良原作・脚本・監督映画『金メダル男』主題歌として書き下ろされた「君への手紙」を収録したシングル。秋から冬の足音が聞こえてくる季節ゆえ、胸に染み入る歌詞とメロディが、風のようにより一層の切ない味わいを心に運んでくる。 (C)RS

THE ROOTS ~偉大なる歌謡曲に感謝~

桑田佳祐が自身のルーツである日本歌謡の中から“東京”を題材にした楽曲を披露した音楽番組を新たな編集を加えてBD化。古き良き過去の名曲18曲と、ビッグバンドによってリアレンジされた自身の楽曲「東京」、新曲「悪戯されて」の全20曲を収録。




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