「アナ雪」にも登場した、迫害された北欧の少数民族/映画『サーミの血』
こんにちは、映画で美活する映画美容ライターの此花です。
迫害された少数民族と言えば日本ではアイヌが有名ですが、北欧にもそんな少数民族がいるのをご存知でしょうか? トナカイ遊牧民族「サーミ」です。
「アナ雪」に出てくるクリストフを覚えていますか? そう、エルサの妹アナを助けるトナカイ飼いの彼。クリストフが実はサーミなのです。クリストフが小さな頃から大人に交じって氷を採る姿が映画では映し出されていますが、幼い子供を労働させるあのシーンがサーミが北欧で受けてきた差別を示唆したものだという意見も。
サンタクロースが住んでいると言われている“ラップ・ランド”に多くのサーミが住んでいます。“ラップ・ランド”とはスカンジナビア半島北部の北極圏を中心とした、現在のノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの4カ国に分断されている地域。
サーミはトナカイと一緒に季節ごとに移動しながら、過酷な自然のなかで暮らしてきました。もともとはトナカイを狩猟していた民族ですが、9世紀からはトナカイの飼育を始めて遊牧するようになったのだとか。なかには数千頭のトナカイを飼う大きな遊牧家族もいたそうです。
とはいえ、サーミはアイヌやアメリカン・インディアンのような先住民と同じく、北欧の多数民族から常に差別を受けてきました。19世紀後半に入ると北欧諸国はサーミに対し、独自の文化や言葉を放棄させようとする同化政策を施行しますが、20世紀に入ると、スウェーデン国家は分離政策へと方向転換します。
この分離政策というのは、サーミはスウェーデン人よりも人種的に劣っているという考えに基づいた法律。トナカイ遊牧のサーミ人が土地を購入して定住したり、ほかの仕事に就いたりすることを禁止するものでした。
本作でも、サーミの子供たちは「移牧学校」という寄宿学校に入学させられ、スウェーデン語を押し付けられる反面、スウェーデン学校に行くことは禁じられました。「移牧学校」には研究者が定期的に来訪してサーミの人種的特長を調査したと言います。作中、サーミの外見はスウェーデン人と変わらないのにもかかわらず、子供たちがみんなの前で裸にされて骨格を調べられるという非人道的なシーンが。
第二次世界大戦後には、サーミの人権や教育が改善され、現在では職業や居住の自由といったスウェーデン人同等の基本的人権が与えられました。結果、現在のサーミは様々な職種に就いているそう。いまや、トナカイ放牧を生業としているサーミ人は全体の1割ほどしかいません。
しかし、今日のスウェーデンではサーミの言葉や文化を学ぶことのできる学校が設立されています。サーミのアイデンティティを継承していこうとする運動が広がり、サーミの若い世代はスウェーデンとサーミの文化を融合する方向に前向きに進んでいるそう。
そのサーミの少女の成長を描いた映画『サーミの血』が9月16日(土)より公開されますが、大ヒットしたディズニー映画『アナと雪の女王』にもサーミが実は登場しているのです。
今回は、世界でもあまり知られていないサーミについてお話したいと思います。
アナ雪に登場しているアノ人も
サンタクロースと同じところに住んでいる?
サーミ人の子供たちが通った「移牧学校」
いまもトナカイの放牧をしている?
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