バーで不倫相手の本心がわかったそうです。
「彼は私にも自分の正直な気持ちにも申し訳ないから、妻と離婚したいというのです。そこで私が『離婚したいなら早くきれいに別れてね』というと、うなずいて『明日からのハワイを楽しんで来いよ』と。
そのとき大人だなあ、と感心しました。妻と別れたいけどすぐにできない苦しさと、好きな女に他の男とハワイ旅行を楽しんで来いという寛容さ。大人の男性の風格が漂っていましたね」

なんだか勝手な妄想では…なんて気もしまいますが、同棲相手と大喧嘩になったのは、その直後のことでした。
「帰宅すると怒りの形相を隠そうともせずに、仁王立ちになってドアの前にいました。明らかに嫉妬に狂っている! 驚きました。というのはこれまで怒られたこともなかったからです。旅行の前日の夜だから先に寝ていてほしかったというと、彼が逆ギレして、私を責めます。
だんだんあきれてしまって『そういうの、重いんだよね』とたしなめると、さらに彼がヒートしていきます。フライトから帰ってきて寝不足な上に、私を信用できないと責める男に、だんだん嫌気がさしてきました」
すでにハワイ旅行すら行く気がなくなった田村さん。「私は行かないけど、あなたは行ってきて。向こうで出会いがあるかもしれないわ」と、言いました。
「すると、彼は『別れたくない』と言い返してきたんです。とうとう朝まで言い合いをして、ついに2人とも旅行をキャンセル。私は翌日荷物をまとめて、実家に戻りました」

クリスマスは仕事を入れなかったので、友達と過ごそうとしたら、風邪でダウン。とほほのクリスマスだったけど、同棲相手との別れをはっきり自覚したそうです。では、不倫相手とはどうなったのでしょう。
「元旦に自分の実家に一人で戻った彼が母親に離婚したいと言ったら、なんと改名を勧められたそうです。それで怖気づいてしまったのか、離婚の話はなかったことに。私は呆れて別の人と結婚しました」
それぞれの顛末がありましたね。しかも結婚すると自由恋愛も終わるという田村さんは語ります。
「結婚は夫以外の人と恋愛しないという契約です。独身の頃、恋愛を謳歌したので、結婚に前向きになれました」
自らの春も謳歌し、そして燃え尽くした田村さん。その結婚が長続きすることを祈っています。
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クリスマス・年末年始の忘れたい記憶 vol.4―
<TEXT/夏目かをる イラスト/ただりえこ>