2年ほどつきあったところでミキさんから別れを切り出された。このままつきあってはいたら私は自分で自分を嫌いになる。そう言われたらひきとめられなかった。
そこから
7年という歳月が流れ、二児の父となったタケオさんだが、ミキさんのことは忘れたことがなかったという。そしてまたも再会するのである。38歳のときだった。

「今度は地下鉄でばったり(笑)。それも
ドアが閉まる寸前に飛び乗ったら、目の前に彼女がいた。ふたりで苦笑するしかなかったですね。彼女、僕と別れてから結婚したんだそうですが、3年で離婚した、と」
そのときはふたりとも仕事で急いでいたため、連絡先だけ交換して別れた。だが、タケオさんは連絡することを躊躇(ちゅうちょ)した。ミキさんも同じ思いだったのだろう、連絡はなかった。
「また会うようになっても同じことを繰り返すだけだと彼女も思ったんでしょう。でも
それから1年もしないうちにまた会ったんですよ。今度は大阪で。僕も彼女も出張でした」
仕事が終わった深夜、ふたりは飲みに出かけた。
「
彼女が『腐れ縁』ってつぶやいて。オレたちは腐ってはいないよと僕は言いました。こうなったら運命を受け入れてもいいんじゃないか、と。どんなに別れても再会してしまうというのは、ふたりがつながっているということ。逆らってもしかたがない。オレはミキが好きだよ、一生変わらないと言いました。いつか一緒になれたらいいと思ってる、と」

さすがのミキさんも折れた。じたばたしても自分の気持ちと偶然には逆らえないと言いながら泣き笑いした。
「今もつきあっています。彼女はバリバリ仕事をしながら、そして僕は家庭を守りながら。子どもたちが大きくなっても離婚できるかどうかはわからない。妻に非はないし。ただ、
彼女とはもう別れたくないんです。彼女がいないとやはり僕は僕でいられない」
家庭と恋愛は別だから、という言葉をタケオさんは吐かなかった。家庭と恋愛という分け方ではないのだろう。これだけ縁の強い女性は特別なのだと彼は言った。
「考えてみたら生涯で、
僕はミキ以外の女性と恋愛はしなかったのだと思います。だから唯一無二の人なんです」
あのとき結婚しなければ……と思うこともあるが、それはそれでしかたがない。子どもたちは彼の宝だ。そういう意味では結婚も悪くはなかったと彼は言う。
しかしながら、人生とはなかなか思うようにいかないものだ。だからこそ、生きることそのものがおもしろいのかもしれないが。
――恋する「不倫男」の胸のうち Vol.5――
<文/亀山早苗>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数