大坂なおみ“I’m Sorry”は「謝罪」と「残念」、どっち?<謝る時の英語表現>
大坂なおみ選手の全米オープンのスピーチをきっかけに、ちょっとした論争となった「I’m sorry」の日本語訳。
最初に申し上げておきたいのは、「I’m sorry」は間違いなく「ごめんなさい」の意味でも使われる表現だということ。
デートの約束に遅れれば、「I’m sorry that I’m late(遅れてごめん)」。
メールの返事が遅くなったときには、「Sorry for the late replay(返事が遅くなってごめん)」など。
ただし、「Sorry」は一般的に友人同士や気心の知れた同僚間で使うカジュアルな謝罪ワードであるため、重大なミスをした際や公的な場面で使うのは避けられる傾向にあります。
また、「I’m sorry」は「こんなことになって残念です」という遺憾の意を示したり、「お悔やみ申し上げます」と故人を忍んだり、会話の前後や状況によって意味がガラっと変わってしまうフレーズ。
「Excuse me」と同様に「すみません」「失礼ですが」と呼びかけるときにも使われますが、声のトーンによっては「すいません、ちょっといいですか?」にも「ちょっとあんた(何様なのよ)!」にもなり得るため、実は使い方に気を使う言い回しでもあるのです。
では、間違いなくきっちり謝罪したい際にはどう言ったらよいのでしょう?
上司や取引先などビジネスの場で使っても失礼にあたらず、他の意味に取られる心配もない謝罪フレーズの代表格が、「Apologize アポロジャイズ」」または名詞の「Apology/Apologies アポロジー/アポロジーズ 」です。
これは大坂選手がテレビ出演した際、スピーチの真意をはっきりさせるために「I felt like I had to apologize(謝らなくちゃいけないと思った)」と使った英単語でもあります。
よく「アメリカ人はなかなか謝らない」と言われますが、アメリカに住んでみると、なるほど「ごめんなさい」と言わない人は実際に多いです。
訴訟社会のため下手に謝って賠償責任を問われたくないというのもあるのでしょうが、はたから見れば100%悪い場合でも非を認めたがらないという場合もあり、ちょくちょく驚かされます。
これは個人的な意見ですが、自己肯定感が強く常に自信満々な人の多いアメリカでは、失敗しても自分が悪いなんて1ミリも思わない、もしくは「謝るなんてそんな自信のない態度は取れない」と思う人が多いのではないかと。
筆者も渡米当初、「Sorry」を使いすぎて周囲に自信のない人と受け取られ、職場であまり信頼されていなかったように思います。
その経験を踏まえ、今は「Sorry」の代わりに「Thank you」と言うようにしています。
「Sorry about what happened (こんなことになってごめんね)」ではなく、「Thank you for your help(助けてくれてありがとう)」「I appreciate for your understanding(ご理解感謝します)」。
謝罪の代わりに、ミスを助けてくれたり「こんなときもあるさ、ドンマイ」と励ましてくれたりする仲間に感謝する英語を取得することも、欧米で生き抜くためには重要です。
―橘エコのリアルに使える英語―
<文/アメリカ在住・橘エコ>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
当初「勝ってごめんなさい」と訳されたのに対し、その後「こんな終わり方になってしまって残念です」の間違いだったと各メディアが訂正、話題になりました。
「I’m sorry」は前後の状況や声のトーンで全然違う意味に
謝罪イングリッシュの代表格は「Apologize」
納品が遅れたら、「I apologize for the delay(遅れて申し訳ありません)」。 取引先への返事が遅くなってしまったときには、「My apologies for the late reply(お返事が遅くなり申し訳ありませんでした)」。 とにかく平謝りの時には、「Please accept my apologies」とメールします。 不便・不自由という意味の「Inconvenience インコンビニエンス」とあわせて使うビジネスメールにおける謝罪の常套句、「Apologies for the inconvenience(お手数をおかけして申し訳ございませんでした)」でもSorryの代わりに使えばより丁寧な印象に。 「Regret(後悔する・遺憾に思う)」もビジネスでの謝罪で使われる単語。「We regret any inconvenience(ご迷惑をおかけして申し訳ありません)のように使います。
自己肯定感が強すぎ!謝ることを知らないアメリカ人たち
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。