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朝ドラ『まんぷく』ついにラーメン作りへ。長谷川博己の“理系男子”ぶりが炸裂

 NHK朝ドラ『まんぷく』は第17週で、仕事も家も失って借家へ引っ越した萬平(長谷川博己)&福子(安藤サクラ)夫妻が、ゼロからのスタートを切りました。  そして1/21に「ラーメンだ、福子!」と叫んだ萬平。いよいよ物語のメインテーマ「ラーメン作り」が始まります(ご存知のとおり、『まんぷく』は世界初のインスタントラーメンを発明した、日清食品創業者の夫妻がモデルです)。

物語はついにラーメン作りにたどり着いた

 しかし、この「ラーメン作り」のアイディアは、ブシムス=武士の娘である鈴さん(福子の母、松坂慶子)たちに「屋台を引くの?」「家をラーメン屋にするの?」と不思議そうに聞かれてしまいます。  考えてみれば、インスタントラーメンがまだ世に存在していない時代ですから、このリアクションは当たり前。普通には思いつかない「当時の当たり前」に気づかせてくれ、かつ視聴者が未来から過去をのぞいているような楽しさも味わえる、非常に上手い脚本&演出だと思いました。  ところで、『まんぷく』が特に優れているのは、シリアスとコミカルのバランスと、人物描写の「一貫性と変化(成長)」だと思いますが、それは「ラーメン編」でもやはり健在です。 「変わらないこと・一貫性」は、萬平の言動に特に顕著です。  萬平と福子は、「家で簡単に食べられるラーメン」を開発するヒントを得るため、屋台でラーメンを食べます。  萬平は屋台の大将に、麺について、スープの材料などについて質問しますが、大将が「戦争で家族を失うてなあ、勤めてた会社ものうなってしもうたんや」などと身の上話を語り、「この味にたどり着くまでに12年かかった。このラーメンにはワシの60年の人生、詰まっとんや」と涙を流しているそばから、「ご主人! このラーメン、家で作れますか」「家でこう、簡単にぱぱっと」などと聞いてしまいます。 「そんなわけないやろ!?」「聞いてた? ワシの言うたこと」と大将が呆れ果て、苛立ちを見せるのも当然。そこは福子が一生懸命フォローしますが、萬平はそんなやりとりに目もくれず、黙々と食べ続けます。これぞ萬平。

萬平は典型的な「理系男子」

 余談ですが、我が子がSSH(スーパーサイエンスハイスクール=文部科学省が認定した理科・数学に重点を置く学校)所属で、理系の子が周りに多いことから、『まんぷく』を見ていると、萬平の言動に「ああ、典型的な理系男子だな」と感じてしまうことがあります。  萬平は超のつくお人好しで、善人。「世の中の役に立つ仕事をしたい」という思いから、困っている人がいたら、すぐに手を差し伸べます。泥棒に入った神部くん(瀬戸康史)が救われて従業員になったのも、栄養食品・ダネイホンが生まれたきっかけも、萬平が従業員に奨学金を与えたことが「脱税」とされ逮捕されたことも、どれも萬平の善意・優しさから来ています。  でも、目の前で現実に起こっている客観的事実としての人の痛みには、手を差し伸べるものの、主観による「誰かの苦労話」には興味がない、というか耳に入ってもこない。さらに、自身は、目的を目の前にすると、ご飯を食べることすら忘れてしまう恐るべき集中力から、「苦労」を「苦労」と感じず、時間も忘れてしまう。だから、誰も思いつかないとんでもない発明をしてしまうわけで、「人生〇年をかけた」背景はピンとこないのでしょう。
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少女→妻→母への変化が胸熱
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