Entertainment

小栗旬・中村倫也も集うムロツヨシのインスタライブが面白い

ブレイクする前、コツコツ舞台をやっていた

 そんなふうに毎日毎日続けていることに対して、5月12日(火)の回では、同じことを繰りかえすことに慣れてはいけないというような(大意)発言をしていた。同じことを繰り返すと心がこもらなくなってしまうことがある。それを避けねばならない。毎日同じことを繰り返す舞台をやっている俳優らしい戒(いまし)めである。
 そう、ムロツヨシは今日のようにブレイクする前、コツコツ舞台をやっていた。ムロ式という演劇公演のシリーズを12年前にはじめたとき、観客は1000人いかなかったと先日のインスタライブで振り返っていた。4作目で1000人で、6、7作目で3000人、9、10作目で1万人を越えたのだそう。それがいま、インスタライブを2万人以上が確実に見るようになっているムロ。  彼が映像の世界で注目されたきっかけは本広克行監督作にはじまって、福田雄一作品にたくさん出たことで、面白い俳優という好感度を積み重ねた末、ダメ押しのように恋愛ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」(18年)で主演の戸田恵梨香の相手役に抜擢され、理想的なパートナーとして人気を博したこと。クレバーで面白い人がかっこいいということをしっかり定義づけた。

修行僧のような行為は、先の見えない私達に希望をくれる

 20年7月期も初主演ドラマが待機中で、新型コロナの猛威に合わなければ、いま頃、多忙であったことだろう。だからこそ、家にいてもできる限りのことをやろうと、毎日ライブをやるのみならず、5月5日の夜は「ムロツヨシショー」を行った。  映像作家の真鍋大度と京都の劇団ヨーロッパ企画を率いる劇作家にして演出家・上田誠と組んで、いつもの家のなかでのSF小品的なものを披露。ケータイ、タブレット、パソコン、テレビとたくさんのモニターの中に、音楽家、俳優、演出家など様々なムロツヨシが存在するという多元宇宙を描いたもので、現代を鋭く風刺したかのような秀作だった。  やれることが限られている状況で、フリートークみたいなものだけでなく出来得る限りのエンタメも見せようという心意気。そのときのムロはいつものインスタライブとはまるで違い、視線も定まり、しゃべりのスピードも速く力強い。最後に語ったこの不自由な状況下での決意表明のようなものは熱かった。  いつものインスタライブのときは鏡面で逆に映っているからちょっと不思議な感じもするが、ショーのときはちゃんとした機材を使っていたから安定感があった。インスタライブではあえてのゆるさを狙ってやっているのかなと感じる。  さらにはYou Tubeで、この3人による「非同期テック部」という部活動をはじめた。ものを作っていないといられないようで、仲間を募ってフットワーク軽く、創作活動を増幅させながら、ストイックに毎日、ライブも続けている。誰もがこうであらねばいけないということはないが、ムロツヨシの修行僧のような行為は、先の見えない私達に希望をくれる。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ