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問題のある精子提供者にダマされることも。同性カップルが子を授かるまでの苦悩

「法律がない」という問題

image1――先ほど同性カップルは「法律で守られていない」とおっしゃっていました。具体的に教えていただけますか? 茂田:私たち同性カップルはこの日本社会ではまだ“想定されていない存在”なので、子をもつ過程で、現状、法律で禁止されていることも認められていることもありません。日本では精子提供にかかわる法律がなく、病院側は基本的に日本産科婦人科学会のガイドライン(「生殖補助医療実施医療機関の登録と報告に関する見解」)に則した対応を行っています。 そのガイドラインには、AID(提供精子を用いた人工授精)を受けられるのは、「法的に婚姻している夫婦」が対象であることが記載されています。 長村:日本産科婦人科学会には、AIDを行う医療施設が15カ所登録されています。しかし、同性カップルは法律上の婚姻関係にはならないので、ガイドラインには反することになってしまいます。 ――病院で断られてしまうということですか? 長村:日本産科婦人科学会のガイドラインには、「法律上の夫婦であることを確認するため、戸籍謄本を提出することが望ましい」と明記されています。そのため、同性カップルの受け入れを拒否する病院はあります。 しかし、ごくわずかですが子どもがほしい同性カップルに理解を示してくれる先生もいます。こどまっぷでは、そのような一部の先生をなんとかつなぎとめている現状です。 ――病院で提供精子を用いた人工授精を受けるのが困難な場合、ほかに同性カップルが提供精子を用いて子どもを授かる方法はないのでしょうか? 長村:病院を利用せず、自分たちで行う人もいます。たとえば、精液をシリンジと呼ばれる器具に入れ、女性の体内に注入するシリンジ法というやり方があります。しかし、何度シリンジを使っても子どもができないことは珍しくなく、最終的に病院でAIDを受けたいという人は多いです。

“問題のある”ドナーに騙されるケースも…

――提供精子を用いて子どもを授かる場合、どのようにして精子提供者を見つけるのでしょうか? 長村:カップルによって異なります。先ほどもお伝えした通り、日本では精子提供にかんする法律上の規則がなく、精子バンクもまた、法的に認可されたものではありません。  日本産婦人科学会に登録された医療施設のなかに、精子バンクとしての役割をもつ施設はありますが、同性カップルの利用は対象外となるため、海外の精子バンクを利用する人や知人から精子提供を受ける人はいます。SNSなどで国内でドナー(提供者)を探すことも可能ですが、“問題のある”ドナーが多いため、こどまっぷではおすすめはしていません。 ――“問題のある”ドナーとは何か、具体的に教えてください。 長村:基本的に海外の精子バンクでは、さまざまなリスクを避けるため「同じドナーからの子どもは国内で10家族まで」などと制限されていることがほとんどです。リスクとは、子ども同士が将来知らずに近親相姦となってしまったり、そのまた子どもたちに先天性障害が広がることを指します。日本でも個人運営の精子提供のサイトが法人として活動していることもあるので、海外の精子バンクを通さないような、国内のSNS上にいるドナーには注意が必要です。 無制限に精子提供できるため「100人に提供した実績があります」のような言葉に引っかかって精子提供してもらうと、同じコミュニティ内に何人兄弟がいるかわからないような状況が生じてしまうのです。 ――そういったリスクがあっても、SNS上でドナーを探すことを選ぶ方もいるんですね。 長村:そうですね。日本には法律やガイドラインがないことは大きな原因になっていると思います。海外の精子バンクを通すと、精子の購入や輸送費でお金がかかってしまいます。ですが、国内のSNS上には「応援金として医療費を支払う」というドナーも存在し、それに食いついてしまう人もいるのです。ですが、精子を提供する側がお金を支払うのは、おかしな話ですよね。 茂田:もしかしたら自分の遺伝子を受け継いだ人間を増やしたいというような思想を持った人がお金を払っているのかもしれません。ですが、どのようなリスクがあるのか知らないまま、手っ取り早い方法でドナーを探すのは危険なので、おすすめはしません。
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SNSで広がる精子提供の危険性
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