――今回の作品では、プロの女王様・鏡ゆみこさんが「監修」ではなく「参謀」という形で参加、題材にSMが使われています。実際に女王様やM男(えむお。マゾヒスト男性のこと)さんたちと交流してどのように感じましたか?
新井:舞台はSMサロンだし、SMのことを描いてるけど、SMのメンタリティや考え方の回路っていうのは、一般の人にも利用すると楽になる部分あるよなって。
これもまた微妙で、「ごっこ」って言葉を使うと本気で真剣にやってるM男さんに失礼なんだけど、あくまで物語として使う意味での「ごっこ」ができたら楽なのになあって。SMサロンは、真剣に「ごっこ」ができる遊び場。M男さんたちは、プレイが終わった後に語り合う人も結構いる。痛みに耐えて疲れてるしで、ほんとに10代の部活終わりの感じなんだよね。
清水:部室でジュース飲んでる感じ(笑)。
新井:ハレとケの場って必要なんだろうなって思った。お祭りってそうだったでしょ、かつて。お金のために街をどんどん開発しちゃうけど、穢(けが)れの場所があるって子供にとってはかなりの勉強になる。あそこは危ないとか、よくない人がいるとか。もちろん危険な目にあうのはよくないけど、穢れの場所って実は逃げ場にもなる。それが世の中から消えていくのってやばいよなと。0か100のどちらかで、いけないものは「無くせ、潰せ」って。ゆみこさんの店を見てると、避難場所になってるんだなって思う。
「すご」「おもしろ」意外なくらい女性読者からの反応
――今回の新作に対して、どんな反響がありましたか?
新井:ここ10年では一番反応がいいかなっていうのと、意外なくらい女の子が喜んでくれてるのがチラチラ見えて嬉しい。「すご」「おもしろ」みたいな感想は、反応だけで言ってるんだなってわかってすごい嬉しくて。女の子に読んでもらいたいっていうのは、もともとの目標だから。男は読まなくてもいいとは思わないけど(笑)。あんまり読者を想定して描いたことなかったんだけど、今回はとにかく女の子に読んでもらって元気になってもらいたい…ってまた余計なお世話なんだけど(笑)。
漫画家の山本英夫さん(※注…『殺し屋イチ』『ホムンクルス』の作者)から「本読んだよ」って連絡が来たから、「ソフトな『殺し屋イチ』女子会みたいな感じでしょ?」って言ったら、「まさにそれ!」って(笑)

山本英夫「殺し屋1(イチ)」電書バト