「育児デマ」で批判殺到の絵本作家・のぶみ。それでも熱烈支持する地元ママ勢から“敵認定”された女性の後悔
―連載「沼の話を聞いてみた」―
「のぶみで地雷を踏んでしまった」
ある日、筆者のSNSのDMにこんなメッセージが届いた。どういうことだろう?
「相手が“のぶみ信者”だったとは知らずに、うっかり批判的なことを口にしてしまって……」
「のぶみ」とは、『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)の大ヒットによって有名になった絵本作家のことである。
Eテレ(NHK)での仕事や内閣府「子ども・子育て支援新制度」(すくすくジャパン!)シンボルマークを手がけるなど活躍の場は広いが、プロフィールの詐称や作品の内容などに絶え間なく批判が集まり、常に炎上している印象があるお騒がせ作家だ。
昨年11月には、縄文時代への自説をInstagramで発信し、縄文時代を研究する著名アカウントにツッコまれている。これまでも子育てクラスタではたびたび炎上していたが、新たなジャンルの人たちにものぶみ氏が見つかったという、新展開を見せていた。
そんなタイミングで筆者にDMをくれたのは、40代の里美晴子さん(仮名)。地方都市に長年暮らし、行政や自治体とのやりとりも多い仕事に携わる2児の母だ。
少し前、仕事の関係である女性と地元団体との仲介役をつとめることになった。経歴は申し分ない。しかし1点、気になることがあった。
「あの人、のぶみ絵本の読み聞かせ会とかしているでしょう? そこだけがちょっとひっかかると言えばひっかかるかな」
同僚との雑談でちょこっと漏らした感想であり、「そうなんだ~」と軽く流してもらっていい部分だった。ところが。
「あなたに、のぶみさんの何がわかるの!!!」
地雷である。同僚が目の前で、まるでメントスコーラのごとく怒りを噴出させている。
「のぶみさんは子どもたちに絵本をたくさん寄付してくれたりして、立派な人じゃないですか」
「ここの地域のママたちはみんな、のぶみさんが大好き」
「あのO先生が信頼している人なんだから、間違いあるはずがないでしょう」
「子どもたちに絵本の読み聞かせをすることの、何が悪いのかしら」
O先生とは、地元のママ界隈で影響力のある、ある“お教室”の女性指導者だ。
あー、やっちゃったわぁ……! と晴子さんが後悔するも、時すでに遅し。地元ではO先生を中心にのぶみ氏支持の輪ができていて、一部に熱狂的な信者がいることを失念していた。
晴子さんが「のぶみ絵本の読み聞かせ」を不安に思うのには、理由がある。前出の『ママがおばけになっちゃった!』を、子どもらの目に触れさせたくないのだ。
俗称「ママおば」は、“ある日突然ママが事故に遭い、死んでしまった!”という衝撃的な物語。発売は2015年7月。初版は4000部とごく一般的な数字であったが、翌年にはシリーズ累計53万部という驚きの大ヒットを飛ばしている。YouTubeなどの読み聞かせ動画や、キッズスペースの絵本コーナーでもよく見かける作品だ。
しかし売れた・話題になった本が、いい本だとはかぎらない。特に「ママおば」には、疑問視する声が多数あがっている。
2015年にwebサイト『QREATORS』に氏のインタビュー記事が掲載され、当時それを読んだ筆者も、あらためて子どもに読ませたい本ではないと認識した。記事で親の大切さをわからせるためという意図が語られ、「ビンタ級の威力があると思う」とコメントしていたからだ(『Amazonランキング1位 「ママが死んじゃう絵本」なのにママたちから大人気のわけ』より。現在はページ削除)。
要は「ほらほら、親が死んだら困るだろ~?」と恐怖で子どもを従わせるってことでは。そりゃ、日々の子育ての中で夜遅くまで寝ない子どもに手を焼いて「もうオバケの時間だよ!」とか言ってしまうことはあるけれど。乳幼児に向けて「親が死ぬ」ってあんまりでは。
「のぶみさんは、立派な人」

「ママおば」の問題点とは

自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。「女子SPA!」のお問い合わせフォームより、題名に「沼の話」と入れて、ぜひお気軽にご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。