「私としましょうよ!」ストレートすぎるSさんの逆ナン
三軒茶屋駅から徒歩数分。焼き鳥が美味しいと評判の居酒屋は、テーブルもカウンターも満席だった。

Sさんが、店内に1つしかないトイレの順番を待っていると、中から無精髭の男性が出てきた。背が高くがっしりした体格で、黄色いTシャツがよく似合う。
その男性の顔を見て、Sさんが「あっ」と小さく声をあげた。
「お兄さん、かっこいいですね~。私としましょうよ!」
無精髭の男は、思わず「ええっ!?」と素っ頓狂な声をあげて、笑い出した。
男性「え、なになに、酔ってんの? 大丈夫?」
Sさん「酔ってますけど、お兄さんが私のタイプだってことはわかりますよ! よかったら、ほんとにホテル行きましょうよ!」
男性「いやいや、今、会社の人たちと来てるから……」
Sさん「私、どうせ朝まで飲むんで、もしどこか泊まりたくなったら一緒に行きましょうよ~」
そう言って、自分の電話番号を書いた小さな紙を渡す。Sさんは連絡先の交換にまごつかないよう、
常に連絡先を書いた紙を数枚持ち歩いているのだ。

その店で飲んでいると、1時間後、知らない番号からメールの着信があった。
<さっきは、どうも。まだ飲んでます?>
スマホの画面から顔を上げ、ニヤリと微笑むSさん。
「ごめん、私予定入ったんで、もう出るね!」
一緒に飲んでいた友人たちは、「やってこい!」と笑って送り出した。Sさんは店を飛び出し、駅前の狭い歩道を勢いよく駆け抜けていった。