それから10ヶ月近くたった昨年のクリスマスイブのこと。
夫が突然、自宅に現れた。
「子どもたちが算段したんですよ。だけど玄関で夫の姿を見たとき、なぜだかふっと若いころのことを思い出した。私はできちゃった婚だったと思い込んでいました。確かに妊娠したのはきっかけだったけど、
他の女に取られたくない、彼と一緒になりたいという思いは確かに私の中にあった。こんなふうに突然、私のアパートに現れたことが何度もあったなと思い出したんです」
つい家の中に夫を招き入れた。子どもたちはふたりでこっそり家を抜け出していたようだ。
夫は「本当にごめんなさい」と言って妻を抱きしめた。夫が渡した小さな箱には指輪が入っていた。
「私たち、結婚指輪を買わなかったんですよ。子どもが生まれてくるのに指輪にお金を使いたくなかったから。結婚して18年たってもらった指輪に、ちょっと気持ちがほだされました」
いつしか子どもたちが帰ってきていて、にこにこ見守っている。
「
とりあえず許すか」
イツコさんはそうつぶやいた。いや、そうつぶやくしかなかった。一度はほとんど夫から離れた気持ちが戻ったのを実感したという。
「ただ、次やったら離婚だからね。それだけは言ってあります。次はもう子どもたちも味方につかないと夫に宣言しているようですから」
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夫婦再生物語 Vol.5―
<文/亀山早苗>
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