「DVの定義として大事なのは、殴るや罵声を浴びせるといった“行為”がポイントではありません。2人の関係性に『支配とコントロールがあるかないか』が、判断のポイントになります」(拓さん)

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「対等なパートナーシップは本来、夫と妻がそれぞれの車に乗り、個々に運転している状態です。しかしDV当事者の夫婦というのは、妻(被害者)の車の助手席に夫(加害者)が乗り込み、妻の運転にあーだこーだと指示を出すようなもの。妻が右にハンドルを切りたいのに、夫はそうさせない。次第に妻は『右に行きたい』と言うことが出来なくなり、考えることすらしなくなっていく。こういった日常行為に支配とコントロールのある関係がDVの基本構造です」(拓さん)
DVは出身地域の特性や個人の性格の差、言い方など、受け手やシチュエーション次第の部分も大きいからこそ、判断に難しいという指摘もします。例えば「アホ!」という言葉は、地域によっては親しみを表す表現の1つとして使われている場合もあります。とはいえ、その一言で傷つく人がいるのも事実。大切なのは、受け手がどう感じているかなのです。
個人差によって解釈が大きく変わるDV。被害者としては「自分たちの関係はおかしいのではないか…」と、確認し、適切な対処を望んでいます。中川さんは「当事者同士の解決は危険ですし、難しい部分はあります」と前置きした上で、気づきにくいDVの実例を3つ教えてくださいました。
1:お前のため
「『お前のために言ってるんだぞ!』という枕ことばが付いた主張は、ほぼDVと考えて良いでしょう。この一言を添えるだけで、言われた方は『私が悪いのかな』と納得してしまいます。でも冷静に考えると、それはお前(被害者)のためではなく、支配してコントロールするために言っているんです」(亜衣子さん)
・◯◯が俺を怒らせてるんだぞ
・◯◯がもっと良くなってほしいから言ってるんだ
・出されたご飯に点数をつける
・掃除したあと、出来てない部分を見つけてネチネチ指摘
類似例として、上記のような表現も、相手のことを考えている風を装ったDVです。料理や掃除をはじめとしたあらゆることへのダメ出しも、「お前がもっと出来るようになるために言ってあげている」と主張してきます。これって結構会社でも聞こえる一言ですから、気をつけたいところです。