怖くて逃げたのにエジプト・カイロでまさかの再会!その晩…
しかし、カトマンズの晩からおよそ1か月半後、カイロの安宿街近くのレストランで食事中、後ろから声を掛けられます。ゆっくりと振り向くと、そこにはジョージがいたのです。
「改めて謝ってきたので、『もういいから。でも、二度としないでね』と言って、それで私のなかでは終わったつもりでした。でも、そう考えていたのは私だけでした」
その日の深夜、安ホテルの個室で就寝中、「カチャカチャ」というドアノブを何度も回す音に気付いた聖美さん。ドアスコープからゆっくりのぞくと、そこには能面みたいな無表情のまま何度もドアノブを回しているジョージがいました。

「幸い自前の南京錠で二重ロックにしていたこともあり、途中で諦めたみたいですけど、カトマンズで襲われたときよりも怖かったです。
別の宿に泊まっていると聞いていたから安心していましたが、どうやら私と同じ宿に移動してきたみたいでした。まさかそこまでするとは思わなかったので完全に油断していました」
この件以降、ジョージからのSNSメッセージはすべて無視。SNSもすでに立ち去った街を「これから○○に向かいます!」と投稿したり、行く予定のない国をダミーとして挙げたりして、かく乱していたそうですが、そうした聖美さんの偽装工作をかいくぐって追跡を続けます。
「それ以降は滞在先のゲストハウスのスタッフにジョージの写真を見せ、『彼はストーカーだから来たら追い払って』と頼んでいました。
また、それまでの旅で仲良くなって、かつ信頼できそうな旅行者にも事情を説明して、彼に関する情報提供を求めました。怖いし、気持ちが悪いし、とにかくもう顔を見るのも嫌でした」
一時は帰国も考えたそうですが、「あんなヤツのせいで世界一周を中断したら悔いが残る」と旅を続行。とはいえ、その後もジョージとのニアミスは続きます。
イスタンブールやパリ、ペルーのクスコでは遭遇を間一髪で回避!

「トルコのイスタンブールでは観光からゲストハウスに戻ると、スタッフのおじさんが『手配書のアイツ、君が泊まっていないか尋ねに来たぞ!』と言われてビックリ! 知らないと言ってくれたので助かりましたが、あの執念深さは本当に怖かったです」
結局、本人と会うことは二度となかったそうですが、パリや南米ペルーのクスコなどでも同じ時期に滞在していたことが後に旅仲間たちからの情報提供によって発覚。しかし、ジョージは国境を超えてストーキングするほど聖美さんの一体どこを気に入ったのでしょうか?
「それは私が一番知りたいです(笑)。別に美人でもなければ、モテ期だってありません。告白されたのも旦那含めて人生で2人だけなのに。あっ、ジョージがいたから3人ですね。
まあ、そんな私が言うのもなんですが、イケメンってあまり好きじゃないんです。友達からは『この王子様っぽいルックスならストーカーでもいいじゃん!』って言われましたけど、そういう問題じゃないんです!」
なお、ジョージからのメッセージは聖美さんが帰国するまであったそうですが、SNSを退会して一切の連絡手段を絶ったため、彼の行方は知らないとのこと。
旅先での出会い自体は素敵なものですが、初対面の相手ゆえに警戒を全面的に解くのは考えもの。旅の高揚感からハメを外さないように注意したほうがよさそうです。
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シリーズ 旅行のヒサンな話 ―
<TEXT/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>