――カメラの位置を車椅子の高さにして、明さんの目線を体感できる映像が印象的でした。監督は日本とアメリカの違いを感じたそうですね。

『37セカンズ』より
HIKARI監督「日本ではアメリカよりも車椅子ユーザーの人をあんまり見ないですね。特に都心はバリアフリーであるようでない。それは大都会に住む人々と同じで、どこかに目には見えないバリアがあるというか。車いすユーザーにとっては生きにくい街だと思います。
だからまずは、『
車椅子で生活するのはどういうことか』を伝えるところから始めたくて、カメラの目線を車椅子の高さに設定し、表情のクローズアップを撮ったりして、観客が主人公の生活の一部になれるように映像で表現しました。それから、やはり彼女の成長をきちんと映像で映し出したかったので、撮影もほぼ順撮りにしたんです」
――確かに、映画の冒頭とエンディングで見せる彼女の表情は、全く違います。

『37セカンズ』より
HIKARI監督「『障がいがあろうがなかろうが、あなた次第』という劇中のセリフがありますが、これは障がい者の映画ではなくて、人は自分を信じればどんどん可能性が広がっていくという物語なんです。それには、
私達のひとりひとりが心にもつ色んなバリアをフリーにすることが大事なんじゃないでしょうか」
――今回の映画体験は明さんにどのような影響を与えたのでしょう?
HIKARI監督「明ちゃん本人からは、映画を通し色々な人と出会うことで、とても刺激的で新たな人生経験ができた、と聞いています。それもただ『楽しかった、スゴい経験だった』というだけではなく、また今まで経験したことのない分野にもチャレンジできたと。 だから、明ちゃんも、皆さんにも、自分にとって一番ピンと来るものを選んで進んでほしい。自分の勘を信じて。いつか答えが必ず出てくるから」
監督・脚本:HIKARI 出演: 佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり/板谷由夏 2019年/日本/115分/原題:37 Seconds/PG-12/配給:エレファントハウス、ラビットハウス/ 挿入歌:「N.E.O.」CHAI <Sony Music Entertainment (Japan) Inc.> 2020年2月7日、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー