「ちょっと!!」と、お客様の前とは思えない大きな怒鳴り声。
「
◯◯(座席)の人のスーツケース大きすぎるわよ! 機内持ち込みは無理!」
ザワザワしていた機内がシーン。皆の視線がこちらに集まります。

……これ、本当によくあること。
でもね、チェックインカウンターでも荷物の大きさは確認済み。機内持ち込みできる荷物の個数やサイズには規定があり、私たちもこんな風にゲートで問題にならないように細心の注意を払っているのです。
だけど、確認もせずに返事はできない。
お客様はすでに座席についていて荷物は頭上の棚にあるとのことなので機内に入り、確認すると……。これはOK!でしょうというサイズ。
「
これは機内持ち込み可能です」そう言うと、「
いや、ダメ。今日は満席で荷棚が溢れるから」
確かに一理ある。お客様はチェックインカウンターを去った後、免税店で買い物をしたりするので機内持ち込みをする荷物が増えるケースは珍しくありません。もし、荷物がのり切らず、出発時刻直前に貨物室へ運ぶなんてことになったらフライトが遅延してしまうかも、それは絶対に避けたい……。
「すでに搭乗が完了しているエリアの荷棚も空いていませんよね? それならお客様と話をして、貨物室に移動させる許可をもらいます」と、その場をやや離れた機内の隅で話す私たち。

そのときの客室乗務員はというと、顔と顔の距離15cmくらいの近さで
「
早く、早く! あなたのせいよ、あと1分で終わらせて! だからグラホって使えない………」
若かりし頃の私、早くもここでスイッチが入りかけます。
「
なるべく急ぎますので、道をあけてください」
イラッとした表情と声で客室乗務員から離れようとすると
「
生意気な女ね」
えーここ機内でお客様もいるのにそんなこと言うの?と驚き半分、怒り半分。
「
時間がないので」
売り言葉に買い言葉で私も嫌な言い方になる。
そこからは、早くしなさいよとわかりましたの言い合い。結構な声のボリュームで。騒ぎを聞きつけたクルーパーサーと私の上司に双方引き離され、お客様のスーツケースは貨物室へ。フライトは定刻出発していきました。
上司からのお叱りを受け、冷静さを取り戻してくると、「なんてことをしてしまったんだ! お客様の前でケンカ寸前だなんて接客業失格だ」と激しい自己嫌悪に陥ったのは言うまでもありません。
もし、あの日に戻れるのならもっとオトナな対応をしたかった……。今更だけど、そう思わない日はありません。
―グランドスタッフの裏話 VOL28―
<文/高木沙織>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。2021年からは、WEB小説の執筆も開始。Instagram:
@saori_takagi