「太ったおばさんだからこそ男性を落とせるの」逆ナンパの達人が教える口説きテク
【逆ナンする女性たち VOL.3】
異性として見られないことを逆手に取り、相手を油断させて男性をお持ち帰りする凄腕のおばさん逆ナンパ師がいると聞き、さっそく取材させてもらった。
「太ったブスのおばさんでも、やる気さえあればやれるんですよ」と言うのは、逆ナンの達人・Rさん。彼女に、「おばさんでもできる逆ナンテクニック」を教えてもらった。
Rさんはニコリともせず、飲んでいたチューハイのグラスを、勢いよくテーブルに置いた。聞いてるこちらが、思わず尻込みしてしまうほどの迫力だ。
Rさんは神奈川県出身、阿佐ヶ谷在住の36歳。阿佐ヶ谷に住んでそろそろ1年になるが、引っ越しを検討している。
「私、“焼畑”なんです。近所の店のお客さんたちを一通りお持ち帰りしちゃうので、同じ場所に長く住めないんです」と、無表情のまま淡々と語る。
29歳の時、長く同棲した彼氏と別れたのをきっかけに都内を転々としながら、逆ナンするようになった。ターゲットの年齢層は学生~70代と幅広く、国籍も豊かだ。
地味な黄土色のセーターに、黒の綿パンツ。化粧はほとんどしておらず、アクセサリーもつけていない。恰幅(かっぷく)がよく、キビキビ話すので逆ナンの達人というよりは「肝っ玉母ちゃん」のイメージに近い。
「女として見られないことが、逆に強みですね。みんな油断するんで」
そう言って、初めて笑った。親しみを感じるチャーミングな笑顔だった。
阿佐ヶ谷は、Rさん曰く「高円寺ほど若くなく、荻窪ほど落ち着いていないちょうど中間の街」だ。ライブハウスや小劇場などが集まっているため、夢追い人が多い。しかし、親の代から住み続けているお爺さんや、家族と住むサラリーマンも多く、飲み屋の客層はバラバラだ。
訪れたのは、寡黙な大将と若い男女が切り盛りする小さな居酒屋。お通しの煮物は、味がひたひたに染みていた。短冊のメニューが行儀よく壁に並び、本日のおすすめを知らせるホワイトボードが控えめに吊るされている。うっすら流れる70年代のフォークソングは、大将の趣味だろうか。
Rさんの隣のカウンター席は、カップルや初老の会社員などが何度か入れ替った後、バンドマン2人組が座った。
無精髭に黒縁メガネ、そしてギターケース。年齢は20代前半~半ばくらい。阿佐ヶ谷によくいるタイプの若者だ。1人は長身で痩せ形、もう1人は筋肉質で黒いニット帽を深くかぶっている。
2人は、海外の音楽について熱く議論しているようだった。
「あ、そのバンドいいよね」
唐突に、Rさんが隣のバンドマンに声をかけた。
「えっ、知ってます!? お姉さんマニアックですね!」
長身の男の子が笑顔で答える。そのやりとりがあまりにも自然だったので、元々知り合いなのかと思ったほどだ。
「おばさんは、話しかけても警戒されにくい」とRさんが言っていた通り、彼女は2人の会話にすんなり参加していた。Rさんは、音楽、演劇、アニメ、映画に詳しく、知識と話題が豊富だ。日頃からアンテナを張り巡らせて、いろんなジャンルの話に興味を持つことも、逆ナン成功の秘訣なのだろう。
3人は日付が変わるまで音楽談義で盛り上がった。Rさんは全員分のお会計を払い、バンドマンたちを2軒目に誘った。「飲み代は全額払った方が、次の店に誘いやすい」という。
狩りの現場に同行取材
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