「男の子はクッキーさん、女の子はタルトさんと呼びます」…ズレたジェンダー教育、どう対応する? 専門家に聞いた #令和の子 #令和の親
選択的夫婦別姓について議論が交わされたり、LGBT理解増進法案が提案されたりと、ジェンダーに関連するニュースや社会の取り組みが世間を賑わせています。
NHK Eテレでは子ども自身の心や身体の大切さを学ぶ番組『アイラブみー』が反響を呼び、性のあり方を親子で学べる書籍『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA)は23万部を突破するなど、性・ジェンダー教育への関心が高まりつつある昨今。教育現場でもSDGsと絡めて園児や生徒たちにLGBTへの理解やジェンダー平等の意識を持ってもらうよう努力を図り、子どもたちの指針となっています。
ジェンダーについて考える中で必要なのが「表面的な部分を見るだけでなく、何のためにやっているのかという根底を意識すること」だと語るのは、大妻女子大学人間関係学部の准教授・田中俊之さん。
ジェンダー教育とは、性別にとらわれずひとりひとりの人権を尊重して個人の資質や能力を活かせる社会を実現するために、子どもたちの意識を育む取り組みです。そして性別による格差をなくすためには、体の性だけでなく、心の性についての理解も欠かせません。
「好事例としては、男児への“○○くん”呼びをなくし、男女とも“○○さん”で統一した例があります。男女お互いがより丁寧に接するようになり、成功した事例といえるでしょう」(田中さん)
意識の変化が見られる一方で、中にはいまだ旧来の価値観の意識が根強く、対応に混乱している現場もあるようです。以下に紹介するのはあくまで一部の事例ですが、ジェンダー教育浸透の難易度の高さが垣間見えるケースとともに、その問題の背景や対応を田中さんに解説してもらいました。
都内のある幼稚園のクラス会でのこと。今年度の指導計画について保護者達へ教諭からこんな説明があったそうです。
「わが園で積極的に取り入れているSDGsへの取り組みの一環として、“ジェンダーの人”に寄り添う姿勢や、“ジェンダーの価値観”を取り入れていきたいと思っています」
説明を聞いた保護者のひとりである亜沙美さん(仮名・40歳)は、その発言に疑問を感じざるを得なかったと言います。「“ジェンダーの人”とは? “ジェンダーの価値観”を取り入れるとは?」と。
ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指します(JICA 独立行政法人国際協力機構HPより)。教諭の説明に当てはめてみると意味が通りません。
おそらく、この教諭はLGBTなど他の言葉と混同しているのではないかと考えられます。ジェンダーギャップ問題や性的マイノリティの方々への取り組みが議論されている昨今、多様性という同じ枠組みの問題として報じられがちなせいか、理解が追いつかず、区別ができていない大人も多いようです。
ジェンダー教育は何のためにあるのか
ケース1:“ジェンダーの人”って誰? 教える側が理解する難しさ
